私は学校を終えてすぐ、小さな車に家財道具一式をつめこみ、フェリーではるばる沖縄本島よりもっと先へ渡りました。行き先は「石垣島」八重山諸島のうちのひとつです。島の周囲は約162キロ、年間平均気温は24.0度と暖かく、サトウキビ畑と美しい珊瑚礁に恵まれた宝石のような島でした。そこで働きながら古い一軒家を借りて、絵を描くために1年半ほど住んでいたのです。
石垣島での日々、海を目の前に眺めながら生活していると不思議な感覚を味わいました。それは、自分の心が裸にされるような、何も隠せないむき出しの心を見てしまうような・・。目に痛いほど鮮やかな海や、しけに怒り狂う波、まっ赤に燃える雲。それらを見ていると日常がすぅーっと遠くへ引いていき、心の奥底に眠る気持ちにイヤでも触れてしまうのです。覆い隠すものがない研ぎ澄まされた光景のなかで、本当にたくさんの、自分自身の感情に出会うことの出来た時間でした。
積乱雲が発達しながら雨とその後の夕暮れを連れて向かってきます。
雨雲が海の上を渡ってくるのです。こちらは降っていないけれど、もう目と鼻の先が大降りです。雨の匂いと湿った風が肌にひんやりと吹き付けてきます。こういう現象を沖縄では片雨(カタアーミ)と言うとききました。
そしてそののち、雨後の空。
思いの詰まった一年半、島のことはいつ思い出しても焦がれるように懐かしく、まるで自分の一部分を置いてきてしまったような気持ちにさえなってしまいます。
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