

満月で十五夜の夜
春の糠雨が続いていましたが雨があがっていたので、
小田原の海に出てみました。
まだまだ雲が厚くて、でも、満月の気配がします。
ところどころ明るくて、あの雲の後ろにいるのだな、と思います。
雨後で、雲が厚く空を走っていますから、
光の気配がところどころ感じて幻想的です。
じっと眺めていると、ほんの一瞬、その姿を覗かせてくれました。
雲が月の光で彩雲のように輝き美しいこと!
本当にひと時のことで、すぐにまた厚い雲に覆われてしまいました。
本当に、月待ちをしていると、こんなふうに顔を覗かせてくれることがあります。
何度もあります。
偶然といえば偶然になりますが、本当に、それならちょっとドラマティックな幕開けを見せますか?というふうに、ショーを展開してくれるのです。
誰にでも、あることだと思います。
私は、こういうときに、つながった!と確信して
とても嬉しく感じます。
それは、確信なので、なんとも証明しようがありませんが、
こんな小さい、月から見れば本当に本当に小さい
私の意識を感じてくれて、
ありがとう、と、思います。

今夜は丹沢の奥の方で月夜野を描いていたのです。
8時過ぎが月の出なので、夜8時くらいに行って、12時くらいまでいました。
山の中、誰も来なくてぽつんといるのはとっても好きです。
雨の山の中も好きで、気づけば半日くらい、経ってしまいます。
雨か月夜野を描きにきます。
夜に包まれるのは好きです。
雨と夜はこの世界で、一番孤独を感じません。
最初はギィと夜の鳥の声がこだましていました。
それからゴーという、遠い飛行機のエンジン音。
やがて本当に静寂がやってきます。
山あいからその金色の輝きをのぞかせた十六夜の月は、
すでに右上がりに高いところへのぼり、
湖を煌々と照らしています。
最初、あまりにも静かで、自分の鼻息の音かしら?と思いました。
良く耳を済ませば遠くから聞こえてきます。
きれいな口笛のような音です。風の音ではないみたい。
風のない晩です。
気のせいではなく、口笛のようです。
すこし音程が高かったり低かったり、呼び合っているようです。
そこで気づきました。
鹿の声です!
鹿が笛のように、ピー、ピー、と呼び合っているのです。
月夜に、月の光で照らされた野山に。なんとも幻想的です。
初めて鹿の声を聴いた夜でした!
・:,。★゜・:,。゜・:,。★゜・:,。゜・:,。★゜・:,。゜・
Copyright (c) 2017 Tanaka Migiwa, All Right Reserved.